「タマへ」

この文章は、1999年5月、タマが永眠してから、かいた文章です。
一時期サーバーの関係ではずれてしまいましたが、また復活させました。
…実は今でも読み返すと涙が出ます。(笑)


皆様、励ましのお言葉やメール、本当にありがとうございました。
ようやっと私も社会復帰しかけてまいりました。
まだ、思い出したり話をすると想いが涙にかわって出ちゃいますが…(笑)

タマは、本当にきれいな死に顔でした。
まるで若猫のように、眠っているような感じでした。

その日、朝から呼吸が楽そうでした。
それまでは、せき込んだりぜーぜーしたりでしたが。
夕方になり、近所の方がいらしたときに2.3回せき込んで… それから、息をしなくなりました。
あと10日ばかりで13回目の 誕生日を迎えるところでした。

まだタマが幼い頃、母が、タマに「13年は飼ってやるよ」と言ったそうです。
その時、なぜ“13年”と言ったかは母もわからないそうです。
猫は、そう言われたことは覚えていて、守ってくれる生き物と聞きます。

猫というと、甘ったれで気ままでわがままでプライド高くて…とよく言います。
タマは、それから比べるとずいぶん人間らしかったと思います。
人の言葉をよく理解し、していはいけないこともちゃんと守ってました。
(飼い主バカと言われるかもしれませんが…(笑))
私があぐらをかいて、ひざをたたくとタマは座りにくる。
タマと私は「魂のとけあう者」だった気がします。 「人に近い猫」でした。「友人」でした。

GW前にいなくなったとき、死期を悟っていなくなったようです。
でも、ボロボロの姿で戻ってきました。
世話になった人に、お別れを言うためではなかったのではないかと。

近所の人も、「タマに会っていいですか?」と訪ねてきてなでながら
「ごくろうさん」、「ありがとうな」と声をかけてくれる。

私はタマが死んでから、死んだことを忘れるように心が動きました。
でも、思いだして涙のために動きが止まります。
タマが死んだのに、水を飲んだり頭をかいてしまう自分に疑問をもってしまったり。
魂のとけあった分だけ、涙がでるんでしょうね。
「悲しい」という言葉はでませんでした。心にも。
ただただ、「タマへの想い」に涙しました。

タマが帰ってきて、病気の背中をなでながら少しは元気になってくれるのでは…
という期待もありました。でも、覚悟もしているつもりでした。
脳裏には、すでに「死」を描いていました。

でも、現実に結果を直視したとき、脳の活動は闇になり、
溶けてしまって何もなくなってしまったのではないかという状態になってしまいました。

よく、死ぬと「ありがとう」ときくが、今はそんな言葉でないです。
「ありがとう」なんて言葉で表せるものではない気がします。

まだ、手が、耳が、タマを覚えているのだし。忘れないでいきたいです。

昔、父が「猫どこだ? 猫、猫!」という言葉に
「え? 何? 呼んだ?」 と私が答えたことがあります。
「猫」と私の名の「れいこ」を聴き間違えたからです。
響きが似ていることもさることながら、もしかしたら、
私は「猫に近い人」であったのかもしれないと思います。
だから、よけいに魂がとけあったのではないかと。

赤くはれた目と、すり切れた鼻の下をしばらくは携えていることでしょう。
こればかりは、時間が解決してくれるしかありませんから。

猫ウィルス性白血病。3年の潜伏期間。発病するまでにワクチンをうてば、
今は助かると言います。なぜ、そうしなかったのか。
病院に縁のなかった今ではとても悔やまれます。

テリトリーを守るために、近所に増えてきた野良とタマは戦っていました。
足を腫らしたり、耳を切ったり。それでうつされたのでしょう。

ケガをしても、自力で治す強い猫でしたので病院には本当に行くことがありませんでした。
逝く何日か前、タマは何も食べず、飲まず。
鼻水がたれて半開きの口。目も瞬膜が半分閉じて半眼状態。
動物くさくなりました。
ふだんはお日様のにおいしかしない、清潔な猫でした。
前足に鼻水とよだれが垂れているのに、ふく気力もない。
そんな姿なのに、行こうとする私の顔を動かぬ体を動かして見るのです。
すがる目ではありませんでした。
まるで、タマが自分の脳裏に私の顔を焼き付けておこうとするかのように
開かぬ目を必死で開けて、見るのです。
私の顔を忘れまいと。

私も忘れない。絶対に。

本屋で、MAYZONという人が描いた漫画「夢見の森のモーリス」(小学館)
という本を買い、読みました。
死んだ猫がファンタジーの世界で人間に転生する日を楽しく暮らしながら待っている。
という話でした。

タマも、そうなのかな。と思いました。
今度は人間になって私の前に現れてくれるかな。
でも、また猫でもいいからもう一度、会いたいです。

完全復帰にはまだしばらく時間がかかると思いますが
みなさま色々本当にありがとうございました。

FROM すず猫 1999年5月